告白/中学生花道編
by 宮沢さとり
「す、好きですっっ。付き合って下さい!!!」
桜木花道・n回目の告白は、告白相手の
「ゴメンなさい、桜木君。あたし、好きな人がいるの」
という言葉によって失敗に終わった。
ズッコーンとショックを受ける花道を、その一部始終を物陰から見ていた桜木軍団の面々が物陰から出てきて囃し立てる。
「おめでとう!花道!!n回目のゴメンなさい!!」
「フラれ続けてn人目!!」
「この調子で記録を伸ばしてくれ!」
……4人が頭突きという報復にあったのは言うまでもない。
一方、花道をふった女の子の方と言えば。花道に呼び出された校舎裏から足取りも軽く、校舎の中へと戻った。その表情はといえば、軽い足取りとマッチする、とても嬉しそうな顔だった。
ガラッと教室の扉を開けると、放課後なのに彼女のことを待っていた女子生徒が数人、扉の方に顔を向け、
「どうだった!?告白だった!?」
と訊いてきた。
「うん!」
明るくその子が答えると、
「おめでとう!これであんたも和光中美少女メンバーの仲間入りねっ」
と、クラスメイト達は口々におめでとうを言った。言われて女の子は照れたように微笑んだ。
……何を隠そう桜木花道は、面食いとしてよく知られていた。つまり桜木花道に告白されたということは、イコール審美眼の優れた桜木花道により、美少女だと認められたことになるのだ。
「……で、ちゃんと付き合いを断ったんでしょうね?」
クラスメイトの一人がそう言い、女の子は、
「勿論」
と答え、しして心の中で(もったいなかったけどね)と付け加えた。
花道が次々と告白してくれないと、「和光中美少女メンバー」は増えないということで。したがって、「美少女」と認定されることを望む、まだ告白されていない女子学生の恨みを買わずに済むよう、「桜木花道から告白されたら絶対に断ること」という暗黙の了解が和光中女子学生の間にはあるのだ。
勿論、桜木花道を含む男子学生はそんなことは露知らない。だから花道は今回もとってもとっても落ち込むのであった…………。
哀れなり、桜木花道。